日本語では、何気なく「気」という言葉をとても多く使います。「気が重い、気が利く、気難しい、気にする、気が気でない、気が散る、気に入る、気を配る、気を失う、人気、元気、根気、天気、空気、病気…」など、数え上げたらきりがない程です。
それは、私たち日本人の生活と「気」とが密接に関係している事を示しているとも言えるでしょう。実はこの「気」という漢字は略字であることをご存知のかたも多いと思いますが、元々は「气の中に米」と書いていました。この字の由来として「气」の部分は天体や自然を表していて、中の「米」は人間が八方に光を放っている姿(食べ物の米という意味もあるようですが)を表しています。
つまり、人は天地自然からエネルギーを吸収することで、生き生きと活動することができるというのが本来の「気」の由来です。また、古代の中国哲学や思想の中でも世界は「気」から成り立っているとされ、人は「気」が凝集されて形を成し、生命活動を維持していると考えられています。
そして、東洋医学では心も体も含めた様々な病証は「気」の異常として現れると捉えています。
つまり、「気」を全身に巡らせる通路(経絡)の流れがスムーズであれば健康で、通路(経絡)の流れに異常が起こってしまうと人は病気になってしまうという考え方です。
「病は気から」という言葉がよく使われますが、この「気」の意味は「経絡を流れる気」として捉えてみてください。
さて、東洋医学における病気の治療は、漢方薬、鍼灸、あん摩、指圧などを用いて「気」の流れを整え、生きとし生けるが本来持っている自然治癒力を高め、病気になりにくい体、また、病気になっても治りやすい体質を創ることを目的としています。
自分というのは自然の中の一部分であり、人が生き生きと活動するためには自然から与えられた「気」はなくてはならないもの。しかし現在では、世界的な経済の発展に伴い森林の減少、水資源不足、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量増加、それによる地球温暖化などの環境破壊問題が年々深刻化しています。我々人間が発展を求めた結果でもある自然破壊は、人間の「気」にもダメージを与えていて、「気」の不調が様々な病を引き起こしていくことに繋がる東洋医学の考えに結びつけることができます。
目覚ましい医療の発展の背景には科学の進歩があり、現代医学の治療法が注目されるのは然るべき事ですが、今一度、自然から与えられる「気」を気にして、自然を大事にし、共に生きることも大切な治療に繋がることを忘れないようにしていきたいものです。