日本語には「怒って(気が)逆上する」「びっくりして気が動転する」「思い悩んで気がふさぐ」「悲しんで意気消沈する」「心配して気が気でない」「考え過ぎて気分が落ち込む」など感情の起伏に対しての有様を表現することが多いと思いませんか。
東洋医学ではこれらの感情が過度や過少になることで五臓に変調をきたすと考えられていて、感情を怒•喜•思•憂(悲)•驚(恐)の7種類(七情という)に分類し、順番に肝•心•脾•肺•腎と相互に関連づけて捉えています。
東洋医学においての「肝」は、現代西洋医学の肝臓とは異なり、自律神経の中枢としての働きを機能の一つとしています。
皆さんも良くご存知の自律神経は、生存のための基本的な循環、消化、排泄などの機能を無意識のうちに常時調節する神経で、交感神経と副交感神経からなりたっています。
交感神経は主に緊張•興奮時に働いている神経で、心拍数増加、気管支拡張、消化器の機能抑制、血圧上昇などを促し、副交感神経は主に平常時やリラックス時に働いていて、心拍数減少、気管支収縮、消化液分泌促進、血圧下降などの作用。
現代人にとって、怒りやイライラ感はストレス社会の中で生きる上で最も切実な問題ですので、「怒」と「肝」の関係について取り上げてみます。
怒り、イライラは「肝」の機能を失調させる原因になり、お腹が痛くなる、血圧が上がる、頭痛がするなど、体のいろいろな不調を誘発してしまいます。
怒りっぽくて瞬間湯沸かし器のように、まさに頭から湯気が出るほど感情が沸騰してガミガミ怒っている人の場合は、かなり重症で、怒りをぶつけている相手だけではなく、大変残念なことに自分自身の体も犠牲にしています。
さて、どんな症状かというと、
まず怒りの初期段階では、肝気が高まり顔面紅潮、不眠、肩こりになりやすい(肝陽上亢:いわゆる高血圧)。さらに怒ると目の充血、頭痛、めまいなどの症状が現れ(肝火上炎:激しい突発性の症状)、最終的には肝火が内風を呼び起こし、脳血管障害を起こすことに…(中風)。つまり、「怒」の感情は我が身(肝臓をはじめとする内臓など)と相手を傷つける諸刃の剣なのです。もし、理不尽な怒りの対象になってしまった場合は、「この人の肝は不調だな」と心の中で心配して差し上げましょう。
ただ、身を削って叱ってくれる、心ある人の言葉は忘れないようにしたいものです。 どうぞ自律神経の不調和を自ら引き起こす事のないように、過度な感情作用にはくれぐれもご注意ください。