松栄堂薬局がお届けする健康発信ブログです。皆さんの美容と健康をお助けするお役立ち情報を発信していきます♪

風邪にオススメの漢方

 葛根湯と柴胡桂枝湯は、風邪(感冒)のときに使う漢方薬ですが、症状によって使い分けをする必要があります。さらに、葛根湯と柴胡桂枝湯には、風邪(感冒)以外の症状でも使うことが出来ます。葛根湯と柴胡桂枝湯について、それぞれ解説をしていきます。 

葛根湯について 

“風邪をひいたら、葛根湯を飲む”と一般的に言われているくらい漢方薬の中で一番有名かと思います。少し、余談な話になってしまいますが、薬局に来店された方にどのような漢方薬を飲まれているかを聞くと番号で答える方が多くみえます。そして、その番号で①というと葛根湯になります。諸説あるみたいですが、漢方薬の研究が有名な葛根湯から始まったから①がついているというようです。 

〇葛根湯がよく効く風邪の症状 

 ・寒気があるが、汗は出てこない 

 ・後頭部を中心にした頭痛がある 

 ・首筋を中心に肩こりがある 

 ・咽の痛みがある 

 発病初期と言われる風邪のひき始めの症状が対象になります。期間としては、発病してから3~4日ぐらいが対象になります。 

〇風邪をひいた時に熱が出る理由 

 風邪を引き起こすウイルスとしてライノウイルスやコロナウイルス(*1)などがあります。特徴としては、熱に弱いという事があります。そのため、風邪をひいた際は、ウイルスをやっつけるために熱が出ます。寒気がするのは寒気を感じさせることによって厚着をさせたり、体が震えるのは筋肉を動かすことによって体を温めることで対応を上げるためです。 

*1:新型コロナウイルスは、従来の風邪ウイルスと同じ仲間になりますが感染力や症状が違います。通常の風邪とは別の対応方法が必要になります。 

〇葛根湯が効く仕組み 

 体表では汗を出して風邪による熱を冷ます。 

体内では発熱を上げる” インターロイキン-1”という物質の産生減少、そして、免疫力を向上させる” インターロイキン-12”という物質の産生増加が起きます。 

〇風邪以外の症状での葛根湯の利用 

 風邪をひいたときの漢方薬として有名な葛根湯ですが、風邪以外の症状でも効果があります。 

・鼻炎(粘り気が強いような鼻水や鼻が詰まっている場合) 

・副鼻腔 

・アレルギー性鼻炎、結膜炎 

・中耳炎・外耳炎(初期) 

・肩こり 

・筋肉痛 

・頭痛 

・じんましん、湿疹、皮膚炎 

・いぼ 

・小児夜尿症 

・歯痛 

〇葛根湯の使用注意点 

 葛根湯には麻黄という生薬が含有されています。麻黄には、炎症を抑えたり交感神経を興奮させる作用がありますが、下記のような方が服用すると副作用が出る可能性があるため注意が必要です。 

・胃腸が弱い方で体力が無い方→食欲低下、胃痛、腹痛、便秘、下痢などが起きる可能性 

・神経質な方→不眠、興奮、動悸、多汗 

・前立腺肥大の傾向がある方→排尿障害、尿閉(膀胱から尿がほとんど排出できなくなる状態) 

・心疾患のある方の場合、症状が悪化する場合がある 

・重い腎臓病がある方の場合、腎血流量低下により増悪の可能性がある 

*高齢者や体力が弱っている方、そして、心疾患や腎疾患を持っている方は要注意です。 

〇まとめ 

 風邪をひいたら葛根湯 というように一番有名な漢方薬ですが、風邪以外での使用範囲は広く、そして、高齢者や体力が無い方、持病をお持ちの方が使う場合は注意が必要になります。 

 葛根湯の魅力としては、解熱鎮痛剤と違い”眠くなりにくい”、”解熱作用と免疫力向上の両立”があります。すべての風邪症状に使うことができるわけではございませんが、風邪症状のファーストチョイスになると考えます。 

柴胡桂枝湯について 

 柴胡桂枝湯は、風邪(感冒)のときに使う漢方薬です。風邪の時に使う漢方薬というと葛根湯を思い浮かべる方が多いかと思いますが、使うシチュエーションは葛根湯とは違います。 

 柴胡桂枝湯を使うシチュエーションや風邪以外に使う場合について説明をします。 

〇柴胡桂枝湯がよく効く風邪の症状 

・発症後、数日(6、7 日)以上経過している 

・鼻咽喉から気管部の炎症症状がある 

・体力が普通からやや虚弱体質。やや痩せ型で微熱を多くあったり、軽い寒気を感じる方 

・汗かきで、寝汗が多い 

・食欲低下、軽い吐き気、関節痛や筋肉痛があって口の中が苦く粘っている 

・咳は無い、もしくは、あっても少ない 

 風邪が治りきっていないという状態で体力が消耗し、疲れやすさ、全身倦怠感、お腹の調子が良くないなどの症状が出ている状態で使用します。 

〇風邪以外の症状での柴胡桂枝湯の利用 

 柴胡桂枝湯は、風邪症状以外に、腹痛を主とする消化器疾患に効果的です。さらに、心身症(*2)傾向の強い疾患でも使用することが出来ます。 

具体的には、下記のような症状に利用する場合もあります。 

・呼吸器:気管支炎、気管支喘息(緩解期) 

・消化器:胃炎、消化性潰瘍(緩解期)、過敏性腸症候群、 胆石症 

・神経筋:常習頭痛、筋収縮性頭痛、肩こり、肋間神経痛、腰痛症 

・精神疾患:神経症、自律神経失調症、心身症 

・小児疾患:虚弱児の体質改善、夜尿症 

・婦人:更年期障害、血の道症(月経時、更年期、産後などの女性に見られる頭痛、めまい、のぼせ、肩こり、疲労感、月経異常などの諸症状) 

・その他:蕁麻疹 

 漢方医学は、個々の体質を診るため上記以外の場合でも使用する場合がございます。 

*2:心身症とは、ストレスの影響で身体に影響が出る疾患になります代表的なものとして、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、本態性高血圧、アトピー性皮膚炎、頭痛(筋緊張型頭痛、片頭痛など)、疼痛性障害などが挙げられます。 

〇使用時の注意点 

間質性肺炎や偽アルドステロン症や肝機能障害が現れる場合があります。症状が現れたらすぐに服用を中止し医療機関を受診してください。 

間質性肺炎では、発熱、咳嗽、呼吸困難等の症状。 

偽アルドステロン症では、「手足のだるさ」、「しびれ」、「つっぱり感」、「こわばり」がみられ、これらに加えて、「力が抜ける感じ」、「こむら返り」、「筋肉痛」が現れます。 

〇まとめ 

 風邪以外の症状でも使用することが出来る漢方薬で応用範囲が非常に広いことが特徴です。精神的に疲れている状態でお腹の調子が悪い場合や、ストレス性の疾患全般に使用することができます。さらには、抗潰瘍作用や活性酸素消去作用があるという論文も発表されています。そして、中国では新型コロナウイルス軽症時の治療薬としても使われています。