防已黄耆湯は、「むくみ」によく効く漢方薬とされています。「むくみ」についてと防已黄耆湯についてのそれぞれについてみていきます。
「むくみ」とは、専門用語で「浮腫」と言います。体内の水分や液体の分布が変化した状態になります。通常、体内の水分や液体の2/3は細胞の中に存在し、1/3が細胞の外にあります。細胞の外にある水分や液体には、血液や細胞と細胞の間に存在する”細胞間質液”と言われるものがあります。細胞間質液は、細胞に栄養や酸素を与える役割をしています。そして、毛細血管が細胞間質液の量を調整しています。
むくみの状態では、” 細胞間質液”が異常に増加した状態になります。むくみが起きる仕組みとしては、①毛細血管からしみ出す水分量が増える、②細胞間質液から血管に戻す量が減り、③細胞間質液が多くなる があります。
むくみの原因としては、心臓病(うまく血液循環をできないため)、腎臓病(尿は血液を濾過してできますが、尿として排出できないと余った水分が細胞の外に出てしまう)、血栓証(血流が止まってしまうため)、栄養失調(血管に細胞間質液を戻す力が弱くなる)、肝硬変(血管に細胞間質液を戻す力が弱くなる)、そして、立ち仕事(重力の関係で下肢に水分が貯まるため)など、色々な原因があります。
多くの場合は、病気ではございませんが、急にむくみが出た場合や、むくみ以外の症状(熱がある、息苦しい、心痛がある、関節痛があるなど)がある場合は要注意です。
防已黄耆湯は、効能効果については下記のようにされており、水太りに対する効果が期待される漢方薬になります。
「体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症;肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)」(タキザワ漢方廠:防已黄耆湯の効能・効果)
防已黄耆湯は、漢方的には「体表の水毒」を除去する利水剤(水分をとる漢方薬)とされています。体表とは皮膚に近い分の事を指し、そして、「水毒」とは一種の体液代謝異常と考えられます。具体的には、むくみやすい体質で肌が色白で、もち肌、汗をかきやすい、側、顔やまぶたがむくむ、指が腫れぼったい などがあります。
つまり、むくみやすい方向けの漢方薬となるわけですが、下記のような自覚症状をお持ちの方が対象となります。
・むくみ易い:特に下半身にむくみがみられることがある。
・疲れやすい:体が重く動くのが億劫、だるい、疲れやすいと感じていることが多い。これらが相まって夏を苦手とすることがある。
・汗っかき:汗かきで夏は流れるほどであるが、咽の渇きがないことが多い。
・水太り(お腹を圧したときに柔らかい感じがする)
・関節痛:関節の腫脹、疼痛があり、特に膝関節によくみられる。炎症の強い場合や痛みが強い場合は除く。
・尿の出がよくないことがある。
・蕁麻疹や皮膚病、皮膚潰瘍、化膿症がたまにある。
・月経不順、月経過少がたまにある。
あてはまるパターンとして更年期前後の女性が多いと想像されます。実際に、体力が低下した人で、ぶよぶよと太って体が重く、運動不足で、とくに下肢がむくみやすく、多飲し汗を多くかき、息切れしやすい場合に用いることが多く、なかでも、変形性膝関節症などによる膝の痛みに悩まされる中年以降の女性に多いです。
変形性膝関節症の症状では「膝に水がたまる」という症状が出ますが、たまった水を排出に防已黄耆湯は効果を発揮します。
なお、漢方医学的には、むくみが起きる原因の一つに胃腸が弱ることによって水分代謝が悪くなりむくみが起きると考えています。
「むくみ」とは水分代謝が悪いことによって起きる症状でほとんどの場合は病気ではないが、重い病気の可能性がある場合がある。
防已黄耆湯は、「体表の水毒」を除去する利水剤ということで”余分な水分”とる作用があります。特に、中年以降の女性で体力が落ちてきている方に効果的です。