二日酔いに効く漢方薬に五苓散と黄連解毒湯があります。それぞれについて説明をします。
五苓散は「水毒」と言われる状態に効果がある漢方薬になります。「水」という概念には、飲食物から摂取した水分や組織液・リンパ液などが該当します。そして、「水毒」とは、「水」が偏って存在して流れが悪くなっている状態になります。なお、「水毒」は「痰飲」とか「湿」とか「湿熱」とも呼ばれることがあります。(厳密には違う意味になりますが、この文章では同じと考えて差し支えございません。)
・朝起床時の眼瞼浮腫感や手指の握りにくさ
・夕方,足がむくむ
・体の一部分だけにむくみがある。
・心臓や腎臓に病気が無いにも関わらずむくみがある
・喉の渇きを感じ水分を多く摂取するが、小便が少ない。
・尿の量が多かったり少なかったりする。
・水様性の下痢がある。
・さらさらした鼻水が多い。
・汗かき。
・めまいになりやすい。
・頭痛があり、特に雨の日に酷くなる。
すべての症状がそろわなくても水毒の症状となります。
五苓散が効く仕組みは、細胞の膜(細胞膜)が細胞の中と外との水の出し入れを調整することで水分の調整を行うことになります。専門用語では、水チャネル(アクアポリン: AQP)の調節作用と言います。
水分の調整作用によって水毒と呼ばれる水の流れが悪い状態の改善を行っています。
水毒に効く五苓散ですが、「二日酔い」に効く漢方薬としても非常に有名です。二日酔いに効く理由をみてみたいと思います。
飲酒による害として「湿」や「湿熱」を生むと考えられています。水の流れが停滞や、熱が発生するという意味になります。つまり、水の流れの改善(専門用語では、「利水」と言います)と、熱を下げる(専門用語では、「清熱瀉火」と言います)ことが必要になります。
五苓散は、利水剤の代表的な漢方薬とされています。二日酔いに効果的です。さらに、二日酔いでも、” 口渇があって水を飲むが、そのわりに尿量が減っていることが多く、頭痛、嘔吐、めまいなど”の場合に効果があるとされています。
黄連解毒湯は、「実熱を治する処方」と言われることが多い漢方薬になります。「実熱」という難しい言葉が出てきましたが、「熱」には、炎症、充血、出血、発熱あるいは、”体が熱く感じる“,精神的興奮,顔面が赤いなどの状態を意味し、「実」には、漢方医学でよく使われる「実証」を意味し、体力が充実している状態、抵抗力がある状態、疲れていない、などの状態を意味します。つまり、傾向としては元気な方や熱がりな方が対象になります。
黄連解毒湯は、主に湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎、アトピー性皮膚炎によく用いられます。自覚症状としては、下記のような方が対象になります。
・喉が渇く、乾燥肌(熱によって水分が奪われるために起きる)
・のぼせがある、赤ら顔(熱は上に行く傾向があるため)
・鼻血が出やすい、血尿がある
・頭が冴えてなかなか眠れない、イライラして眠れない
熱をとる作用がある黄連解毒湯ですが、二日酔いで使用することもできます。
お酒は体を温める熱の性質を持っており、アルコールを多量に摂取すると熱の性質によって咽の渇きが発生してきます。黄連解毒湯には、熱の性質を除く作用があります。さらに、黄連解毒湯がアルコール摂取後の体内のアルコール濃度を低下させることも分かってきています。
なお、黄連解毒湯は、胸苦しく熱を覚え、時に腹痛し嘔吐をもよおす二日酔いに効能を発揮します。