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ストレス社会と柴胡加竜骨牡蛎湯

 精神疾患に頻用される柴胡加竜骨牡蛎湯ですが、まず、ストレス社会と言われる日本国内における社会状況や健康に関する状況としては、下記のようなものがあります 

・コロナ禍に社会不安、不景気 

・うつ病に代表される精神疾患の増大 

・OA機器の普及に伴うテクノストレスの増大 

・メタボリックシンドロームや生活習慣病 

など 

 いずれにしても、「イライラしたり」、人によっては「怒りたい気分」、「不安で圧し潰されそう」などの状態にあるといえます。このような状態を漢方医学では、「肝気鬱結」や、「肝火上炎」や、「肝陽上亢」と言います。(詳細は割愛します。)字を見て気づかれると思いますが、「肝」が絡んでいます。 

 漢方医学の「肝」には、①血の貯蔵と流量調節、②気の運動の調節、③精神・情緒活動の維持、④筋肉・関節を通した運動の維持 などの作用があります。(西洋医学的での肝臓とは、似ている部分がありますが、別物と考えてください。)さらに、「怒は肝を傷る」とか、「肝は目に開竅」とも言われています。 

 精神疾患と「肝」が関係していることがうかがえます。つまり、漢方医学でいう「肝」を治すことがストレス性の疾患、いわば、精神疾患の治療につながります。 

 では、次に、柴胡加竜骨牡蛎湯についてみていきたいと思います。 

柴胡加竜骨牡蛎湯は、『傷寒論』という3世紀初頭に作成された書物が原典となります。当初の使用目的は、「急性熱性疾患にかかって、下痢をさせることによって治すべき証があって下したところ、心下部の膨満と神経過敏、腹部の動悸の亢進が現れ、さらに小便が出にくくなったり、うわ言や、全身の重だるい感じがあり、自分で寝返りもできないほどの状態になったもの」(意訳)と記載されています。現在、熱性疾患で使う機会はほとんどなく、多くは動悸や不眠、イライラなどの精神神経症状を訴える慢性疾患の患者さんに使用されます。病名でいえば、神経症、うつ病、統合失調症などの精神疾患、てんかん、高血圧でめまいや動悸などのあるもの、甲状腺機能亢進症により動悸のあるもの、気管支喘息、円形脱毛症、不眠症、性欲減退、その他頭痛や肩こり、めまいなどの諸症状に応用されます。小児の夜泣きや寝ぼけにも使用される例があります。 

 作成された当初とは違う目的で使用されることの多い柴胡加竜骨牡蛎湯ですが、精神疾患に頻用される理由をみてきたいと思います。 

 柴胡加竜骨牡蛎湯の生薬の成分は、柴胡、半夏、茯苓、桂皮、黄芩、大棗、人参、牡蛎、竜骨、生姜、大黄になります。色々な生薬が配合されていますが、それぞれの役目についてみていきたいと思います。なお、柴胡加竜骨牡蛎湯みたいに柴胡という生薬をメインに使用している漢方薬を柴胡剤と呼びます。柴胡剤の作用には①抗炎症作用②免疫調節作用③ホルモン・自律神経調節作用①中枢神経作用⑤消化器系調節作用が挙げられます。 

柴胡は抗炎症、鎮静、健胃作用などがあり、漢方医学的には疏肝解鬱(「肝」を整え、鬱状態を解き放つ作用)、理気(気の流れを改善)、清熱透表(熱をとる作用)、昇発清陽(「肝」の動きをよくする)の作用があります。 

黄芩は清熱作用があります。柴胡と黄芩でみぞおち辺りに胸苦しさ(胸脇苦満)を緩和する作用があります。桂皮には、発汗作用、気の流れを整える作用、鎮痛作用などがあり、茯苓と桂皮が合わされることで、気が頭に上って伴って生じるめまい・頭痛・不安感を鎮める作用があります。 

そして、名前の由来になっている竜骨、これは大型哺乳動物の化石化した骨で、主に炭酸カルシウムが主成分です。漢方医学的には、竜骨には、平肝潜陽(肝を潜めて安定化させる作用)、追風止痙(ひきつけやてんかん症状抑える作用)、安心定驚(不安感の解消)、定悸(動悸・不安肝の解消)、収斂固渋(発汗を抑える作用など)の作用があります。 

また牡蛎は「かき(牡蠣)」の殻で、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、ケイ酸塩などが含まれています。この竜骨・牡蛎には、不眠、夢を多く見る多夢、めまいなどに対する作用があります。更に茯苓と合わせて用いることによって安神、鎮静作用がさらに強化され、心悸亢進などもよく改善します。 

半夏には、鎮咳・去痰作用や制吐作用があります。生姜を加えることで、半夏の毒を抑え、吐き気を止める作用を増強します。半夏と生姜は、吐き気を止める目的とした基本的な生薬の組み合わせとなります。 

人参には、補気作用、元気を補う作用があり、また津液を補って口渇を止め、体力をつける作用があります。 

大棗には、胃腸機能を整える作用があり、また気虚という気が足りない状況を補う作用もあります。大棗と生姜を組み合わせることで、胃腸を温めて機能を整え、構成所薬を調和する作用となります。 

大黄は、下剤としての瀉下作用が有名ですが、その他に胃腸系の抗炎症作用、血流をよくする作用、清熱安神作用などがあります。 

 このようなことから、柴胡加竜骨牡蠣湯が肝の症状に効き、心神不安状態になり、神経過敏となっている状態を解消するのに役に立ちます。